遺産分割協議が円滑に進まないときのデメリットとは? 争続対策 part1
世間では、よく「三代続くと、資産がなくなる」といわれている。あなたも、このフレーズを一度は耳にしたことがあると思う。
ではなぜ、「三代続くと、資産がなくなる」といわれるのか?
それは、今の日本が、相続のたびに、多額の相続税を支払わなければ後世に引き継いでいけないシステムになっているからである。
そこで多くの資産家は、相続税額を支払わないように、あの手この手を使って様々な相続対策を講じている。しかし、いくら相続税対策をしても、資産が減ってしまうことがある。
それは、遺産分割が円滑に行われないことが原因である。
そこで今回は遺産分割をスムーズに行うことの重要性について解説したい。
相続が生じた場合、遺産を受けつぐ相続人は10ヶ月以内に相続税の申告をしなければならない。
遺言がある場合は指定されたように遺産が分割されるが、遺言のない場合、遺産分割協議を行うことになる。
この遺産分割協議が整った上で10ヶ月以内に申告すれば大きな2つの特例を利用することができ、相続税の額がかなり安くなるというメリットがある。
その2つの特例とは、
・小規模宅地の減額の特例
・配偶者の税額軽減の特例
である。具体的にそれぞれの特例を解説していこう。
小規模宅地の減額の特例
小規模宅地の減額の特例とは、宅地の評価額の一定割合を減額することができるという特例である。
アパ・マンを経営していたあなたに相続が生じた場合、一定面積まで評価額を下げて敷地にかかる相続税を計算することができる。
相続人がアパ・マン事業を継続する場合、200平方メートルまでの敷地については50%減額した残りの50%が相続税の対象となる。
具体例で考えてみよう。(ここでは以下の配偶者の税額軽減の特例は考慮しない。)
あなたは2億円の土地と5000万円のマンションを保有しているとしよう。
相続人はあなたの配偶者の他に、子供が2人いるとする。仮にこの土地が200平方メートルあったとする。
この場合、減額されるのは、
2億円 × 0.5=1億円
である。つまり相続税の対象が2億円から1億円減額されるのである。これにより土地は1億円とみなされる。
相続税には基礎控除というものが認められていて、財産の総額からこの基礎控除をさしひいたものが相続税の対象となる。
基礎控除は以下の計算式で求めることができる。
基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
※法定相続人とは、民法によって決められた相続可能な人のことをいう
このケースでは法定相続人は配偶者と子供2人の3人なので基礎控除の額は
3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
と計算され、4,800万円となる。このとき、相続税の対象となるのは、
1億円(土地)+5,000万円(建物)−4,800万円(基礎控除)
=10,200万円
の10,200万円である。
これをもとに計算した相続税は約315万円となる。特例を受けない場合、相続人全体にかかる相続税は約1,350万円であるので、特例を受けることで約1,000万円も差が出てしまうのである。
配偶者の税額軽減の特例
配偶者の税額軽減の特例とは、配偶者が相続で取得した財産の合計額が一定以下であれば、その配偶者には相続税は課税されない、という特例である。
先ほどと同じ例で考えてみよう。(ここでは上記の小規模宅地の税額軽減の特例は考慮しない。)
あなたは2億円の土地と5,000万円のマンションを保有しているとしよう。相続人はあなたの配偶者の他に、子供が2人いるとする。
この場合約相続人全体で約3,150万円もの相続税が課税されるのであるが、配偶者の税額軽減の特例を受けた場合、なんと相続税は約半分の1,575万円で済むのである。
それでは同じ例で小規模宅地の減額の特例と配偶者の税額軽減の特例が同時に使えた場合はどうだろうか。
上記の例では2つの特例を使うことで相続税を全体で約462万円にまで減らすことができるのである。
この2つの特例は非常に大きな特典であるが、分割協議が整わず、10ヶ月の申告期限を過ぎてしまうとこの特例を受けることができなくなってしまう。
このように10ヶ月以内に分割協議を整え、申告することができれば2つの特例を利用することができるため相続税の額がずっと少なくすむようになる。いかに相続の上で分割協議が重要になるのかがお分かりいただけたと思う。この分割協議を円滑に進めるには、やはり遺言をしておくのがベストである。
遺言には、
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
の3つの方法があるが、法的に有効な遺言書ということで公正証書遺言をすることが望ましい。
次回は分割協議が整わない時のその他のデメリットを解説しよう。